初夏の東福寺 重森千靑先生に聴く枯山水庭園のひみつ

京都

2019.8.9

初夏の東福寺 重森千靑先生に
聴く枯山水庭園のひみつ

開催レポート

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【この企画は】

青紅葉がさわやかに彩る初夏の東福寺。
日本庭園のちょっとした決まりごとを知るだけで、より一層深遠な世界が広がり
寺院を訪れる楽しみが増えることでしょう。
今回は作庭家である重森千靑氏を案内人に迎え、講義や解説をしていただきました。

非公開寺院で聴く、
枯山水庭園の歴史と作り

蒼風が心地よく吹く5月中旬、青紅葉の瑞々しい姿が出迎えてくれた。
臨済宗大本山東福寺の塔頭一華院(いっかいん)は、決められた期間のみ公開される非公開の寺院だ。通された本堂の部屋は、庭を臨む広間の窓が大きく開け放たれていた。見事な枝ぶりの松が1本ある「依稀松の庭(いきまつのにわ)」を眺めながら、重森先生の登場を心待ちにした。

講師の重森千靑(しげもりちさを)氏は、祖父の重森三玲氏と同じく作庭家・庭園研究家であり、現在、大学やカルチャーセンターなどで講師を務めている。庭園講義はスライドに沿って、枯山水庭園の成り立ちから始まった。

古くは室町の後期ごろからその要素が見られる枯山水庭園は、戦争の多かった時代に精神的な拠り所として、また池庭に比べると費用がかからなかったことから盛んに作られた。自然の情景を写し、さらにデザインの要素も組み込めるので「許容範囲の広い庭園なのです」、と先生は説明された。「四畳半ほどのスペースがあれば、誰にでも作ることができるので、気負わずに自宅でも作ってみませんか」と紹介された。

続いて、実際に一華院の庭園を例にとって解説していただいた。「依稀松の庭」が南向きで、松が朱雀を模っており、東が青龍を、西が白虎を表す。大地の四方の方角を守護する、四神相応の考え方が組み入れられた庭園だ。

自ら手掛けた庭園で
砂紋引きの実演と体験

北には玄武(亀)を表す、重森先生が手掛けた「彷彿石庭(ほうふつせきてい)」がある。三尊石の亀、五つの石の州浜は亀の甲羅と玄武にとり巻く蛇を表している。亀の顔の向き、石の配置など製作秘話を聞いた後、抽選で選ばれた数人が庭へ降りて、砂利に模様を描いていく砂紋引きを体験をした。

先の講座で習ったばかりの青海波紋などの模様を、砂熊手を引いて描いていく。体験された方は、想像以上に道具が重たく思うように動かないことや、引いているうちに方向が分からなくなっていくなどの感想を述べていた。皆さん思い思いに描き、自信の作品を写真に収めていた。

こうした砂紋は、1度作ると約1ヵ月は風雨があっても持つという。毎日引いていても同じように引ける日はなく、例えば水紋の中心に何気ない石をひとつ置いてみるだけで、その石が特別なものに見えてきたり、表情が変わったりするので、生活の中に取り入れてみては、とお話があった。

東福寺本坊庭園の秘話

一華院を後に、続いては美しい青紅葉を一望できる 臥雲橋を渡って東福寺本坊へ向かう。本坊敷地内の解説も交えながら本坊庭園の入口から中へ。

本坊庭園には有名な重森三玲氏による4つの庭園が東西南北にあり、その解説を 重森先生から聞くのがこのプランのクライマックスでもある。
1939年6月~11月の期間に作庭され、重森三玲氏が3年かけて実測のため全国行脚し終えた直後に手掛けた作品である。

ダイナミックな石柱が並ぶ南庭は、重森三玲氏が東福寺庭園の中で最初に手掛けた庭でもある。石の表情にあわせて向きを決め、 石組に命を吹き込むために全身全霊を傾け、まさに石との真剣勝負をしたそうだ。

本坊を取り囲むように東西南北に設置された庭園一つひとつが次の庭への布石となるように組まれているというのも印象的である。

また最後の東庭に至っては、お寺側から重森三玲氏への予定外の注文であったという。どのエピソードからも、やはり作品に込められた深い想いがあり、シンプルなデザインの中に日本的な美意識が幾重にも見え隠れしていることに気づかされた。それを感じ取れるかどうかは、観る人の感じ方によるので、庭園解説だけでなく学びの深い内容だった。

今後、枯山水庭園の眺め方は違ったものになるであろうし、専門家の解説を直接聞けるぜいたくな時間であった。

このイベントについて
  • 日程・会場
開催日2019年5月19日(日)
会場名東福寺(京都)
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