JCB MUSICAL

STAGE

2022.6.14

赤堀雅秋プロデュース
『ケダモノ』

札幌公演 2022.5.14(土)かでるホール 公演レポート

【このSTAGEは】

劇作家、脚本家の他、俳優としても活躍する赤堀雅秋さんによるプロデュース作品が、待望の札幌初公演。
大森南朋さん、田中哲司さんとのユニットによる2年半ぶりの新作ということもあり、早くから注目が集まっていました。
2日間3公演が組まれた日程は、すべて満員御礼。
今回はその初日の模様をレポートするとともに、
終演後に行ったインタビューからキャストの皆様の生の声をお届けします。

赤堀雅秋さんによるプロデュース作品
待望の札幌初公演!

会場は、北海道大学植物園の目の前という落ち着いた立地にある「かでる2.7」内のかでるホール。「チケットJCB」先行受付期間においては各回6列目以内のお席をご用意しました。この日は春らしい陽気に恵まれ、散策を楽しみながら会場に足を運んだお客様も多かったようです。

入場時は検温・消毒のご協力のお願い、スタッフはビニール手袋を装着して配布物をお渡しするなど、新型コロナウィルス感染症対策を徹底しての開催となりました。

赤堀雅秋プロデュース『ケダモノ』
―あらすじ―

神奈川県のはずれ、奥には山ばかりが広がる寂れた田舎町。
リサイクルショップを経営する手島は、毎日何をするでもなく、怪しげな自称映画プロデューサーのマルセルや店の従業員の出口、木村との中身のない会話に時間を費やしていた。たまの楽しみは、行きつけのキャバクラでマイカや美由紀をからかうことぐらい。

ある日、郵便局員の節子から「父が亡くなったので家を整理して不用品を引き取ってほしい」という依頼が舞い込む。家の中と敷地内の蔵を物色していると、木村が蔵の中から「あるもの」を見つけた。

このところ、山の方から時折聞こえてくる銃声。野生の鹿が増え過ぎて農家の作物を荒らす被害が深刻化し、猟師が駆除にあたっているのだという。

退屈な日常がふとしたはずみで歪み、軋む。
暴走の果てに待っているものとはー。

赤堀雅秋さん・大森南朋さん・門脇麦さん
インタビュー

初日の昼公演が終わった直後、赤堀雅秋さん、大森南朋さん、門脇麦さんに、貴重な生の声をお聞きすることができました。

―札幌(北海道)の演劇ファンは赤堀作品を生の舞台で観られる機会があまり多くないので、今回の公演を喜んだ方は多いと思います。札幌での上演が決まった経緯を教えてください。

赤堀 札幌は数年前に戯曲のワークショップで呼ばれたことがあり、その時に地元の演劇関係者の方々とご縁が生まれたんです。東京以外で公演を打つとなるとやはり大阪とか名古屋、九州が多いので、どうせやるなら行ったことがないところで、というのがひとつ。あとは、普段下北沢の本多劇場でやっているものを地方でもとなった場合、会場の関係上どうしても1,000人や2,000人クラスの市民ホールみたいなところでやらざるを得ないんですが、そこに関しては自分自身すごくジレンマを持っていて。採算は取りづらいですけど、なるべく本多劇場と同じ空気感、同じ臨場感でお芝居を味わってもらいたいと思っているんです。そこで札幌の関係者の方に相談したところ、今回のかでるホールを紹介していただき、ここならばということで公演が実現しました。

―札幌のお客様の感触、反応はいかがでしたか?

大森 最初はどういう感じか想像しづらかったですが、温かく迎えていただいて、皆さんの反応も良く、ホッとしました。普段そこまで客席は気にしませんが、大きい笑いが起きるとそれを軽く待たないといけないということはあります。

門脇  すごく集中して観てくださっているのが伝わってきたので、やりやすかったです。私は、客席の反応がすごく気になりますね。前のめりに観てくださる感じや熱みたいなものは、舞台に立っていても手に取るように分かるので。それに自分の芝居が引っ張られることはないんですが、やっぱり気になります。

―今回の「ケダモノ」は赤堀さん、大森さん、田中哲司さんの3人によるユニットとして2年半ぶりの新作。コロナ禍の閉鎖的な世を生きる市井の人々を描いた物語は、観る人一人ひとりのリアルな日常とどこか地続きになっている世界線なのだと感じました。今回の作品の発想はいつ頃生まれ、またどのように膨らませていったのでしょうか?

赤堀  コロナ禍という設定にしたのは、オーバーに言ったら脚本を書き始めてからと言っても過言ではなくて。いつもは劇作家として、カッコつけた言い方ですけど普遍的なものを書きたいと思っているので、あんまりその時代時代の出来事を映し出すことはしたくないんです。なのでコロナに関してもこの2年間は避けてきたんですけど、今回は書き始めた頃にロシアとウクライナで戦争が起こり、それ以前に元々日本が抱えてる飽和した空気…年間3万人も自殺するような国ですし、コロナだけが原因ではないそういう何かが破裂しそうな空気感のようなものが、自分の中で鬱積して爆発したっていう感じなんです。だから「コロナで苦しんでる人たちを描いた」っていうつもりではなく、ただこういう現実を描く時にやっぱりコロナは抜きにできないだろうなっていうことで、設定として取り入れました。

―門脇さんは学生時代から赤堀作品をご覧になっているほどのファンだったそうですが、今回カンパニーの一員として作品に参加して、外から見ていた時と実際に内に入ってみての、イメージのギャップはありましたか?

門脇  外から作品を観ている時には「わー面白いなー」っていう感じですが、実際にやるとなると本当に大変で。声もガッスガスになって、毎日お腹痛くて胃が痛くて、みたいな(笑)。でも、それだけ自分を追い込むからこそ出てくる感情じゃないと、この舞台には立ち向かえなくて。もう毎日必死で戦っていますが、楽しいですね。今回のマイカという役に関しては、強いエネルギーを持っていて、恵まれた環境ではないけれど、鬱屈した気持ちよりも生きることとか生命に対して貪欲な、アグレッシブでパワフルな人かなあ、と思いながら演じています。(赤堀さんに向かって)大丈夫? 合ってますか?(笑)

赤堀  合ってます(笑)。そういう門脇さんだったら素敵かなあ、と思って書きました。

―ユニットの一員である大森さんは、毎回どのような心持ちで赤堀作品に臨んでいらっしゃいますか?

大森  いつも稽古をしながら脚本が上がってくるような感じなので、最終的に時間がないぞと思いながら、緊張感を持って初日を迎えています。僕らは同い年なんですけど、同世代が持ってくる作品、書いてくるものはやっぱり共鳴できますし、わかるところがあるので、それをすごく楽しめていると思います。今回演じた手島という男は、これまでよりも若干不良性が増したかな、と。「同じ夢」(2016年)でもそれに近いものはありましたが、今回の方がより具体的にせこいチンピラみたいなニュアンスで。僕が映像で培ってきたイメージが全部壊れました(笑)。

赤堀  あんな、映像の方が嘘でしょ、だって(笑)。

―コロナの影響で演劇をはじめとするエンタメ界全般も立ち止まらざるを得ない状況が長く続きましたが、また再び有観客の公演が行えるようになった現在、芝居の世界に生きる立場としてどのようなことを感じていますか?

大森  目の前にお客さんがいることが当たり前だったのが、その期間は全くなくなった。それは舞台だけでなく、映画もドラマも止まって何もできなくなった時期もありました。そういう意味で言うと、少しずつでもこうやって元に戻ってきたのは嬉しく思います。純粋に、自分が観客としてもそういう機会がなくなっていましたので。

門脇  舞台を観ることってただ「観る」だけじゃなくて、チケットを取って、当日に劇場まで足を運ぶっていう、全部引っくるめての「体験」なんだなっていうことをすごく思って。一時期「外にも出ないでください」みたいな一番強い自粛の時には私も家で映画を観たりしてましたけど、そればかりが続くと心がリアルに動かなくなってくるというか、感情が死滅したのかな?みたいな感覚に陥ったりして。だから、映画館に行くっていう行程も含めての「映画」だということを実感しました。私もお客さんとしてよく舞台観に行きますけど…早く元気になるといいですね、みんなが!

大森  (笑)。

赤堀  コロナが出始めたパニック状態のころはさておき、それが1年2年経っていった中で、思考停止しちゃいけないなっていうことはつくづく思いました。誰がどういう根拠で決めたのかよくわからないルールに対して、そこに従うのが一番楽ではあるんですけど、こういう時だからこそちゃんと自立して行動しなきゃいけないなって。普段の日常って誰に与えられるものでもなく、平凡な日常は自分たちが確立しなきゃいけないことだと思うので。それは政治家やどっかの親父さんがやってくれるものでもなく、自分たちで作り上げていかないといけないことでしょうから。だから演劇でも、こういう小さなカンパニーであったとしても思考停止せず、自分たちで考えて前に進んでいかなきゃいけないなって痛感しています。誰になんと言われようと、そういうことは力強く実行していこうと思っていますね。

―最後に、このインタビューを読んでいるチケットJCB会員に向けてメッセージをお願いします。

赤堀  自分の作品を含めて、若い人にもっと演劇を見てもらいたいですね。それが特に面白くなくても、つまらなくても全然いいんです。観た直後に違和感を持ったとしても、5年後10年後ぐらいに「あれ、実は面白かったんじゃないか?」って思ってもらえるような種蒔きをしたいというか。即物的にただ泣けた、笑えたってことをやってるつもりはないので、若い人たちが観に来て、なんだこの気持ち悪さは?なんだこの違和感は?ということを体感してくれるだけでいい。それが多分、演劇の一番の面白さなんじゃないかと僕は思うんで。とにかく家にいないで外に出て、劇場に足を運んでほしいです。

門脇  舞台に限らず映画とかもそうですけど、「この役者さんが好きだから観る」というリサーチの仕方ってある意味合理的である反面、どんどん視野が偏って狭まっていってしまう気がして。なので、私自身もそうありたいですが、広くアンテナを張っていろんなものを見てくださったらうれしいなと思います。

大森  今回の赤堀くんとのユニットと呼ばれているものに関しては3回目の公演で、次は何年後になるかはわからないですけど、肉体が動き続ける限りは何かしらやり続けるとは思います。僕らも、先輩たちのそういうのを見てやってきましたから。これは俳優の世界に限らず、おじさんたちが頑張ってるのを見て勇気付けられることもあると思うので、自分たちもそういう存在になっていければと思います。

このイベントについて
開催日2022年5月14日(土)・15日(日)
会場名かでる2・7 かでるホール(北海道)
終演直後のロビーで、お客様に公演の感想をお伺いしました。
今現在の情勢を芝居の中の世界観に昇華させる手法はさすが。赤堀作品は観終わった後決して心がスッキリするものではないけれど、通常あまり扱わないであろうダークな部分をエンターテインメントに落とし込んで成立させるところが、唯一無二の魅力だと思います。(46歳/男性)
友人に誘われてなんの予備知識もない状態で観たのですが、まさか最後にあんなことになるとは…という意外な結末で面白かったです。鬱屈していてもそうだとはなかなか言えない今の世の中、「自分たちは鬱屈している! やっちゃうよ!」と言えるところが素晴らしいなと思いました。(58歳/女性)
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